労災保険給付(交通事故等)にかかわる自賠責保険の最高裁判決

労災保険給付(交通事故等)にかかわる自賠責保険の最高裁判決平成30年9月27日判決がありました。身近な内容ですのでご案内します。

 

 業務上または通勤途上で交通事故にあって負傷した場合、労災保険の給付と相手方の自賠責保険(および任意保険)からの給付があります。自賠責保険は労災保険に比べて手続が煩雑ですが休業補償は100%支給され慰謝料や雑費なども認められていますが上限額は120万円。これに対し労災保険に上限額はありませんが、休業補償は80%(特別支給金含む)であり、慰謝料はありません。こういう前提の中で、業務上または通勤途上の交通事故で、最初から労災保険で療養補償、休業補償請求する場合も多々ありますが、その場合であっても別途、自賠責に休業補償差額、慰謝料の請求をすることができます。

 ただし、労災(国)が支払った療養、休業等給付額は労災(国)から自賠責に求償(請求)することになっています。この求償額が120万円(自賠責限度額上限)である場合、あとから被災労働者から自賠責に休業補償不足額、慰謝料その他を自賠責保険に請求しても自賠責からは支払い限度額に達している(国に支払い済み)という理由で一切支払われませんでした。これが今回の判決により変わる可能性があります。

 

 

 今回の判決は、「たとえ労災(国)が120万円以上負担していて自賠責に限度額上限120万円を求償(請求)していようとも労働者から自賠責への損害額の請求は自賠責の限度額の範囲で(国からの求償にかかわらず)認めるべきである、というものです。

 この判決を受けて今後の保険会社の対応が変わると思われます。労災がらみの交通事故については請求漏れがないよう、注意したいものです。 

 

 

 

判決文抜粋

1 所論は,自動車の運行によって生命又は身体を害された者(以下「被害者」という。)の直接請求権の額と労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超える場合には,被害者は,その直接請求権の額が上記合計額に対して占める割合に応じて案分された自賠責保険金額の限度で損害賠償額の支払を受けることができるにとどまる旨をいうものである。

2 しかしながら,被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され,被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。