Q 訪問介護事業所を運営している者です。登録ホームヘルパー(訪問介護労働者)を雇用して利用者宅での介護サービスを行っています。自宅から利用者宅へ指定時刻に直行してもらってサービスを提供しますが、1日1件のときも複数のときもあります。また、会社事務所で報告書を作成したり研修会に出席してもらう事もあります。移動は原則として個人のマイカーです。

サービス内容により時給を設定していますが、ヘルパーの移動に対する時給は特に意識していませんでした。というよりも、時給は高めに設定しており、その中に移動分も含まれていると思っておりました。どうしたらいいでしょうか。

 

お答えします

 

1 直行・直帰であっても事業所からの指示・命令で仕事をしている実態にある場合には労基法が適応される。

2 使用従属関係の労働実態であれば、移動時間、記録時間の労働に対しては賃金請求権が生じる。通勤部分への請求権はない。

3 訪問介護事業所の要件と厚生労働省の指導(雇用関係にある)。

登録ヘルパーの労働者性 名称が個人委任であっても、使用者の指揮監督の実態にある場合には労基法上の労働者です。厚生労働省は「介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労基法9条の労働者に該当するものと考えられること」(2004.8.27 基発第0827001号)との見解を示しています。

 また、質問にある登録型ホームヘルパーについて上記通知は、「短時間労働者であって、月、週または日の所定労働時間が、一定期間ごとに作成される勤務表により、非定型的に特定される労働者」として「非定型的短時間労働者」と呼び、労働条件の明示、労働時間の把握、休業手当の支払い、賃金の算定等に労基法等関係法令上の問題点が多く見られると指摘しています。

労働条件の明示

 訪問介護事業所は、ホームヘルパーの雇い入れ時に、労働条件を明示していなっかったり、不十分な場合が多くみられます。労基法で雇い入れ時の労働条件の明示が義務づけられており、厚生労働省通知では労働契約の期間、更新の有無と基準、就業の場所と従事すべき業務、労働日、始業および終業時刻、休憩時間を特に留意すべき事項としています。おう

移動時間

登録ホームヘルパーの多くは自宅→利用者宅→利用者宅→自宅という直行直帰型の勤務形態をとっており、移動時間の交通費の支払い、業務報告書等記録時間の作成時間が賃金の支払対象になっていないケースがみられます。

 上記厚労省通知では「移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること」としています。そして「賃金はいかなる労働時間についても支払わなければならないものである」と明記しています。

業務報告書等の記録作成時間

 厚労省通知は「業務報告書等を作成する時間については、その作成が介護保険制度や業務規定等により業務上義務づけられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、事業場や利用者宅等において作成している場合には、労働時間に該当するものであること」としています。「自宅」での作成と明記はされていませんが、自宅での記録作成であっても、使用者の指揮監督に基づき、事業所や利用者宅で通常行う記録作成時間数と同等であれば労働時間としてみなされるべきです。

待機時間、研修時間

 待機時間、研修時間についても、使用者が命じたり、指示している場合については労働時間に該当するとし、さらに、研修を受講しないと就業規則上不利益を被る扱いがある場合には、「たとえ使用者の明示的な指示がなくとも労働時間に該当するものであること」とされています。

休業手 利用者からの申込みが取り消されたことを理由にホームヘルパーを休業させた場合に、休業手当を払ってない場合もみられます。通知では「労働日およびその勤務時間帯が、月ごと等の勤務表により訪問介護労働者に示され、特定された後、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、労働の意思を持っているにもかかわらず、使用者が労働日の全部または一部を休業させ、これが使用者の責めに帰すべき事由にyおるものである場合には、使用者は休業手当としてその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わねばならない(労基法26条)」とされています。

就業規則の作成と周知徹底

 就業規則の作成要件は「常時10人以上の労働者」ですが、パートは含まれないと誤解している場合がよくみられます。パート、有期、短期間労働者であっても「常時10人以上の労働者」に含まれます(労基法89条)。また、就業規則は常時作業場ごとに掲示し、または備え付けるなどして労働者に周知する必要があります。労働者に周知されていない場合には、その就業規則は労働条件にならないので注意が必要です。登録型ホームヘルパー等への周知については「書面を交付することによる方法」が望ましいとされています。