勤務時間の短縮
Q 育児休業をとりたかったのですが、仕事が忙しくて言い出せませんでした。せめて子どもが1歳になるまで勤務時間を2時間短縮して6時間にしてほしいと申し出たのですが、会社にはそういう制度はないと拒否されました。
CHECK 1.事業主は、3歳未満の子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければならない。
2 1歳未満の子を養育し育児休業をしていない労働者には、始業時刻変更等の措置をとるように努めること。
3 1歳から3歳未満の子を養育する労働者には、育児休業または始業時刻変更等の措置をとるように努めること。
4 3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者には、育児休業、所定外労働の制限、短時間勤務制度、始業時刻変更等の措置をとるように努めること。
短時間勤務制度の義務化
09年度改正により、短時間勤務制度の措置が義務化されました。ただし、常時100人以下の労働者を雇用する事業主は適用が猶予されています。
事業主は、3歳未満の子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けることが義務づけられました(法23条1項)。
短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間とするものを含まなければなりません。「原則として6時間」とは、短縮後の所定労働時間を1日5時間45分から6時間までを許容する趣旨です。この制度を設けた上で、週または月の所定労働時間の短縮、週または月の所定労働日数の短縮、労働者が個々に勤務しない日または時間を請求する制度などをあわせて設けることは、労働者の選択肢を増やすことになります。
対象者と労使協定による適用除外
3歳未満の子を養育する労働者が対象者となりますが、1日の所定労働時間が6時間以下の労働者や日々雇用される労働者は対象外となります。短時間勤務制度が適用される期間で育児休業をしている期間も対象外となります。
次の場合は、労使協定で適用除外できます。
① 勤続1年未満の労働者
② 週の所定労働日数が2日以下の労働者
③ 業務の性質または業務の実施体制上、短時間勤務をする事が困難と認められる業務に従事する労働者(法23条1項3号)
指針では、「困難と認められる業務」として、国際路線等の客室乗務員、製造業の流れ作業や交替制勤務、担当する企業や地域を他の労働者に分担できない営業などが該当する場合があると例示しています(指針第2の9の(3))。
代替措置
短時間勤務制度が業務上困難として適用除外された労働者に対して、事業主は代替として以下のいずれかの措置を講じなければなりません(法23条2項)。
① フレックスタイム
② 始業・終業時間の繰上げ、繰下げ
③ 保育施設の設置運営その他便宜供与
④ 育児休業の延長など育児休業制度に準ずる措置
小学校就学前までの子を養育する労働者に関する事業主の努力義務
事業主は、以下の区分で、いずれかの措置をとるように努めなければなりません(法24条1項)。
① 1歳未満の子を養育し育児休業をしていない労働者
ア フレックスタイム制
イ 始業・終業時間の繰上げ、繰下げ
ウ 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜供与
② 1歳から3歳未満の子を養育する労働者
ア 育児休業制度
イ フレックスタイム制
ウ 始業・終業時間の繰上げ、繰下げ
エ 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜供与
③ 3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者
ア 育児休業制度
イ 所定外労働の制限
ウ 短時間勤務制度
エ フレックスタイム制
オ 始業・終業時間の繰上げ、繰下げ
カ保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜供与
始業・終業時間の繰上げ、繰下げは時差出勤なので、所定労働時間の変更はありませんが、保育所への送迎の便宜等を考慮した制度であることが必要です。
保育施設に準ずる便宜供与には、ベビーシッターの手配や費用負担等を含みます。
不利益取扱いの禁止
指針(第2の11)では、解雇その他の不利益取扱いを禁止しています。内容は育児休業と同じです。
労働者が希望する期間を超えて、その意に反して適用してはなりません。また、育児・介護休業法の勤務時間の短縮等の措置と、労基法の育児時間とは、趣旨・目的が異なるので、それぞれ実施する必要があります。