休業手当について

休業手当

Q 当社では新しい設備の据付けのため、2週間臨時休業することになりました。2週間のうちには土曜半ドンの日も含まれます。休業手当はどのように計算されるのでしょうか。

 

ポイント

 1.労基法は「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、「平均賃金の100分

  の60以上の手当を支払わなければならない」と定めていますが、全額請求が可能な

  場合もあります。また、就業規則・労働協約・労働契約で特段の定めがあるときはそ

  れによります。

 

 2.労基法で定める平均賃金は、基本的に生活保障のために使われるものであり、半ド

  ンの場合であっても休業手当の計算は一労働日当たりの平均賃金を基礎に計算されま

  す。

 

休業中の賃金請求権

 労基法26条は。「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合「平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。

 

 一方、民法536条第2項は。「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務(労働義務)を履行することができなくなったときは、債務者(労働者)は反対給付を受ける権利を失わない」としており、本来的には全額請求が可能です。行政解釈でも「本条(労基法第26条)は、民法の一般原則が労働者の最低生活保障について不十分である事実に臨み、強行法規で平均賃金の100分の60までを補償せんとする趣旨の規定であって、民法第536条の規定を排除するものではない」(昭22.12.15 基発第502号)としています。不況を理由とした生産調整のための休業の多くは、債務者(労働者)の責めに帰すべき理由はなく、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由であり、債務者(労働者)は賃金の全額請求権を失うわけではありません。一時帰休の際に100%の賃金支給を認めた裁判例もあります(池貝事件・横浜地判平12.12.14)。

 就業規則や労働協約や労働契約で特段の定めがない限り、賃金の全額請求、不払いの場合には、付加金も含めた請求が可能です。また、労基法の「使用者の責めに帰すべき事由」は、民法よりも広く解釈されており、判例は、天変地異などの不可抗力に該当しない限り、労基法26条の帰責事由は存するとしています(ノースウエスト航空事件・最二小判昭62,7,17)。

 平均賃金の趣旨

 労基法で「平均賃金」の計算が必用となるのは次の場合です(労基法12条)。

①解雇予告手当(法20条)、②休業手当(法26条)、③年次有給休暇中の賃金(法39条)、④休業補償等4の災害補償(法76条)、⑤減給制裁の制限額(法91条)です。これらはいずれも労働者の生活を保障する場合であり、平均賃金の算定はできる限り労働者の通常の生活費を反映したものであること

が望ましいことになります。

平均賃金の算定方法については、「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」としています。

休業期間がー労働日に満たない場合の休業手当の額

 半ドンの日が休業になった場合に支給すべき賃金については、以下の行政通達があります

半ドンだからといって、計算の基礎額が半日分になることはなく、あくまで1日分の賃金を計算の基礎としなければなりません。

「労基法第26条は使用者の責めに帰すべき休業の場合においては、その休業期間中平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定しており、従って1週の中ある日の所定労働時間がたまたま短く定められていても、その日の休業手当は平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」(昭27.8.7 基収第3445号)としています。